メキシコは広大な海岸線を持ち、エビ漁業が盛んな国として知られています。特にシナロア州のマサトランは「エビの首都」と呼ばれるほどエビ漁が発展しており、メキシコの食文化や経済において重要な位置を占めています。メキシコのエビ漁は商業的な漁業が中心ですが、観光や文化的側面も持ち合わせています。
マサトラン - 「エビの首都」の歴史と発展
マサトランは19世紀には鉱業や貿易で栄えた国際的な港町でした。当時、魚は重要な貿易品ではありませんでしたが、この状況は1910年代のメキシコ革命後に大きく変化しました。革命による不安定な情勢に恐れをなした外国の貿易業者が事業を売却して国を去り、メキシコ経済は崩壊状態に陥りました。
しかし、1930年代に転機が訪れます。日本の代表団がメキシコにエビ漁を提案したのです。それまでエビは副産物としてしか見られていませんでしたが、この提案をきっかけにマサトランはエビ漁の中心地となり、20世紀を通じてエビ漁とマグロ漁がマサトランの地域経済を支える主要産業となりました。
メキシコのエビ漁の種類と方法
メキシコでのエビ漁は主に3つの方法で行われています:
沿岸漁(Camaron de estero): 小型の漁船(パンガ)を使用し、丸い網を海に投げ入れて行う漁法です。沿岸の漁師は海岸近くや河口域でのみエビを捕獲できます。乱獲を防ぐため、メキシコ政府は季節的な禁漁期を設けています。沿岸漁で捕れるエビ(カマロン・デ・エステロ)は9月下旬から3月にかけてが旬で、エビのセビーチェやスパイシーなアグアチレに最適です。
トロール船漁(Barcos camaroneros): トロール船と呼ばれる特定のタイプの船が3週間ほど航海し、沖合でエビを捕獲します。エビは船上で処理され、バッチごとに急速冷凍されます。この形態のエビの一般的な割り当ては「マルケタ」と呼ばれ、サイズ別に選別された4ポンドの冷凍エビで構成されています。文字「U」と数字は、1ポンドに何匹のエビが入るかを示します。数字が小さいほど、エビが大きいことを意味します。例えば、サイズU-12のエビは1ポンドに12匹、つまり1マルケタに48匹入っています。沖合のエビも季節的な漁業禁止の対象となっており、10月から4月の間に捕獲できます。これらの大型エビはビール風味の衣付き、ココナッツ、またはベーコン巻きエビの調理に最適です。
養殖(Camaron de granja): マサトラン空港に着陸する際に見える大きな水たまりや池がエビの養殖場です。これは最も急速に成長しているエビ産業であり、季節的な漁業禁止の対象ではありません。年間生産量は沿岸および沖合のエビ漁業の生産量を合わせた約3倍にもなります。養殖エビ(カマロン・デ・グランハ)は一年中入手可能で、強い魚の風味がないため、主にセビーチェとして消費されます。養殖エビは通常、沖合や河口域のエビよりも安価です。
メキシコのエビ漁の季節性
メキシコのエビ漁には明確な季節性があります:
シュリンピングシーズン: 一般的に9月から3月までがシーズンです。
禁漁期: メキシコ政府はエビの資源保護のために毎年禁漁期を設けています。この期間はエビの繁殖期を保護するためのものです。
特にロッキーポイント(プエルト・ペニャスコ)などの地域では、9月下旬から3月までがエビ漁のシーズンとなっています。
メキシコのエビ文化と観光
マサトランをはじめとするメキシコの沿岸都市では、エビは単なる食材を超えて文化的なアイデンティティとなっています:
ストリートフード: マサトランの市場や屋台では、「マサトランエビレディース」と呼ばれる売り手が新鮮なエビを販売しています。サイズは数センチから15センチほどまで様々で、船から直接届けられます。
料理文化: エビはメキシコ料理の重要な要素となっており、エビのタコス、セビーチェ、アグアチレなど様々な形で楽しまれています。
観光資源: エビ漁とエビ料理はマサトランの重要な観光資源となっています。多くの観光客がストリートフードツアーに参加し、地元のエビ料理を堪能します。
フェスティバル: 一部の地域では、エビ漁の開始を祝うフェスティバルが開催され、地域の文化的イベントとなっています。
メキシコのエビ漁業の経済的・文化的意義
メキシコのエビ漁業は経済的にも文化的にも重要な意義を持っています:
経済的貢献: エビ漁業はマサトランをはじめとする沿岸地域の重要な産業であり、多くの雇用を創出しています。
国際貿易: メキシコのエビは国内消費だけでなく、アメリカをはじめとする国々への重要な輸出品となっています。
文化的アイデンティティ: エビはマサトランなどの地域の文化的アイデンティティの一部となっており、地域の誇りとなっています。
持続可能性への課題: 近年は乱獲や環境問題への懸念から、持続可能なエビ漁業への取り組みも進められています。
メキシコのエビ漁文化は、その歴史的背景、多様な漁法、そして料理文化との深い結びつきにおいて独特であり、メキシコの海洋文化の重要な一側面を表しているといえるでしょう。特にマサトランのような「エビの首都」と呼ばれる地域では、エビは単なる海産物を超えて、地域のアイデンティティと経済の象徴となっています。